全身麻酔と静脈麻酔は何が違う?美容外科での使い分けを解説
美容外科のカウンセリングでは、
「静脈麻酔と全身麻酔は何が違うのですか?」
「どちらも眠るなら同じではないですか?」
「全身麻酔のほうが危険ですか?」
「静脈麻酔のほうが体への負担は少ないですか?」
といったご質問をいただくことがあります。
静脈麻酔と全身麻酔は、どちらも「眠った状態で手術を受ける」という点では似ていますが、麻酔の深さや呼吸管理などに違いがあります。
今回は、美容外科で行われる静脈麻酔と全身麻酔の違いについて解説します。
静脈麻酔とは?
静脈麻酔は、点滴から麻酔薬や鎮静薬を投与し、眠ったような状態にする麻酔です。
使用する薬剤や量によって、うとうとした状態から深く眠った状態まで調整します。
美容外科では、局所麻酔と組み合わせて使用することも多くあります。
静脈麻酔中は自分で呼吸することを基本とする場合が多いですが、麻酔が深くなると呼吸が弱くなり、酸素投与や気道確保、呼吸の補助が必要になることもあります。
全身麻酔とは?
全身麻酔は、麻酔薬によって意識をなくし、手術中の意識や痛みをコントロールする方法です。
手術内容に応じて、気管挿管や声門上器具などを用いて気道を確保し、人工呼吸による呼吸管理を行います。
比較的長時間の手術や、身体への負担が大きい手術、手術中に患者さまが動かないことが重要な場合などに選択されることがあります。
静脈麻酔と全身麻酔の大きな違い
大きな違いのひとつは、麻酔の深さと呼吸管理です。
静脈麻酔では、ある程度自分で呼吸できる状態を保ちながら行うことがあります。
一方、全身麻酔ではより深い麻酔状態となり、気道を確保して呼吸を管理することが一般的です。
ただし、実際の麻酔にはさまざまな深さがあります。
静脈麻酔でも深い鎮静状態になれば呼吸が弱くなることがあり、全身麻酔に近い管理が必要になる場合もあります。
そのため、両者を単純に線引きできないケースもあります。
静脈麻酔なら途中で目が覚めることがある?
静脈麻酔では、麻酔の深さによっては呼びかけに反応したり、一時的に意識が浅くなったりすることがあります。
手術中の一部を覚えている方もいます。
一方、全身麻酔では原則として手術中の意識をなくした状態を維持します。
「絶対に手術中のことを覚えていたくない」という希望がある場合でも、患者さまの全身状態や手術内容を考慮したうえで麻酔方法を決定します。
全身麻酔のほうが危険?
「全身麻酔=危険、静脈麻酔=安全」と考えられることがありますが、単純には比較できません。
静脈麻酔にも、
・呼吸抑制
・低酸素血症
・血圧低下
・不整脈
・嘔吐
・誤嚥
などのリスクがあります。
全身麻酔にも、
・呼吸や循環への影響
・吐き気や嘔吐
・のどの痛みや声のかすれ
・歯や口腔内の損傷
・薬剤へのアレルギー反応
などのリスクがあります。
重要なのは「どちらが絶対に安全か」ではなく、手術内容と患者さまの状態に対して、どの方法が適しているかということです。
静脈麻酔が向いていることがある手術
比較的短時間の手術や、局所麻酔を併用できる手術では、静脈麻酔が選択されることがあります。
たとえば、
・目元の手術
・鼻の手術
・脂肪吸引
・比較的小範囲の美容外科手術
などで使用されることがあります。
ただし、同じ手術であっても、手術時間や範囲、患者さまの全身状態によって麻酔方法は変わります。
全身麻酔が向いていることがある手術
全身麻酔は、比較的大きな手術や長時間の手術などで選択されることがあります。
たとえば、
・豊胸手術
・広範囲の脂肪吸引
・フェイスリフト
・複数の手術を同時に行う場合
などです。
また、手術中に体を動かさず、安定した呼吸管理が必要な場合にも全身麻酔が適していることがあります。
「静脈麻酔のほうが体に優しい」とは限らない
患者さまから、
「できれば体に負担の少ない静脈麻酔にしたいです」
と言われることがあります。
しかし、長時間の手術を無理に静脈麻酔で行うことが、必ずしも負担を減らすとは限りません。
手術内容によっては、最初から気道を確保し、呼吸や麻酔の深さを安定して管理できる全身麻酔のほうが適していることもあります。
麻酔方法は「できるだけ軽いもの」を選ぶのではなく、手術を安全に行うために適した方法を選ぶことが大切です。
麻酔方法を決めるときに確認すること
麻酔方法を決める際には、手術だけではなく患者さま自身の状態も重要です。
特に、
・年齢
・心臓や肺の病気
・高血圧や糖尿病などの持病
・睡眠時無呼吸症候群
・肥満
・内服薬
・アレルギー
・過去の麻酔歴
・喫煙、飲酒習慣
などを確認します。
これまで麻酔を受けた際に、強い吐き気や呼吸のトラブルなどがあった場合も事前にお伝えください。
まとめ
静脈麻酔と全身麻酔は、どちらも美容外科で使用される麻酔方法ですが、麻酔の深さや呼吸管理などに違いがあります。
静脈麻酔だから安全、全身麻酔だから危険というわけではありません。
また、静脈麻酔だから必ず体への負担が少ないとも限りません。
手術の内容や時間、患者さまの全身状態などを考慮し、その手術を安全に行うために適した麻酔方法を選択することが重要です。
「麻酔が怖い」
「以前、麻酔で気分が悪くなった」
「できれば眠って手術を受けたい」
など、ご不安やご希望があれば事前に医師へご相談ください。
次回は、
「麻酔前の絶食・絶飲はなぜ必要?食べてしまったら手術できない?」
について詳しく解説します。
記事監修
広島プルミエクリニック 副院長 延美緒
形成外科専門医
所属学会・専門医・認定医
- 日本形成外科学会 専門医
- 日本美容外科学会(JSAPS)正会員
- 日本美容皮膚科学会 会員
- ジュビダームビスタ 施注認定医
- ボットクスビスタ 施注認定医
経歴
| 2011年 | 岡山大学医学部 医学科卒業 様々な科の中でも腫瘍切除後の形態再建を担う形成外科に興味を抱く |
|---|---|
| 2011年 | 国立病院機構 岩国医療センターにて研修 医学博士取得 |
| 2013年 | 同 岩国医療センター 医員 研鑚を積み、形成外科医として腫瘍切除や植皮など形成外科的治療に携わる |
| 2014年 | 岡山大学附属病院 形成外科 再建やリンパ浮腫、外傷、ジェンダーなど幅広く形成領域の治療を行う |
| 2016年 | 岩国医療センター 形成外科 眼瞼下垂や熱傷、鼻の再建、腋臭症のオペなど、形成外科医としてより深く研鑚を積む |
| 2018年 | 日本形成外科学会 専門医 取得 |
| 2019年 | 日本美容皮膚科学会 会員 |
| 2019年 | 県内美容皮膚科 勤務 美容皮膚科の診療に積極的に取り組む |
| 2020年 | 広島プルミエクリニック 入職 形成外科専門医の知識と技術を美容外科・美容皮膚科へ活かす為、広島プルミエクリニックへ |
| 2024年 | 広島プルミエクリニック 副院長就任 |
